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menu.14「珈琲に想いを馳せる7月」

7月。やたら空のコントラストが強くなり始める時期だ。
白金色の太陽の下、今年も夏がやってきちゃったよなぁとつぶやきつつも、ついつい熱い珈琲を注文してしまう。

マスターが、ひとこと「お暑いですねぇ」と小首をかしげて苦笑いした。

しばらくして
「お待たせしました」
…と、テーブルに置かれた綺麗な青空の様な青い珈琲カップを手に取った。
その、灼熱の夏そのものを思わせる熱い珈琲は、とても良い香りを漂わせていた。

そういえば、自宅でもいつも誰かのために淹れていた気がする。
まぁ、今となってはどうでも良い事だし、わざわざ思い出す必要も無いんだけどさ。

なんだかなぁ、と苦笑いしつつカップを手に取ると、そこには暑さを増していく空そのものが映り込んでいた。

「まさか」

慌てて、見直す。
そんな訳はない。ここは室内で空が映り込む様な角度でもない。

目の錯覚にしても、不思議だよなと思いながら、熱い珈琲を口にする。
夏の暑さと一緒に、遠い何かジリッとさせる記憶をチラと思い出す。
そう…失ってしまった、もう今は居ない想い人の寂しげな笑顔が脳裏をよぎった気がしたんだ。
そして、どこからともなく潮の香りがする。

一瞬、珈琲に映り込んで見えた幻の空は、とてつもなく青く澄んだ色をしていた。
いつも二人で見上げては、未来に想いをはせて語り合った、あの海辺の夏の青空だ。

そっと彼女の名前を呟いてみた。
もう、逢えない存在の人の。

…どこからか、遠い海鳴りの音が聞こえた気がした。

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