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menu.49「サクラ・サク」

「cafeえりくしる」のマスターの話はいつだって興味深い物ばかりなので、毎回この店に行くのが楽しみだ。
ただ…ほんの数日、顔を出さないと「どうしてたのか」だの「元気にしていたのか」だのと、まるで母親か何かの如く…いや、まぁ…純粋に『人間』の客が少ないらしいから、そういう意味では多分寂しいんだろう、って事にしておこう。

「お久しぶりでございますね、お客様。」
ほらきた。

ひとしきり、近況報告をさせられた後、「少しお待ちくださいね」とカウンターで何かごそごそとやっている。
何をしているのかと思ってみていると、とても背の高いグラスに入った飲み物を持ってきてくれた。

香りの良い花の香りがする。
春の…そうだ、桜の花だ。

「今年の春は、佐保媛様がやたらご機嫌でどこの里でもそれはそれは美しい春桜が咲くので、桜を使った飲み物やお菓子が、まさに花盛りなのですよ」
にこにこと笑いながらマスターがそう言った。

佐保媛と言うのは、こちらの世界の春を司る女神の名前なのだそうで、機嫌を損ねるとそのシーズン中は大変な事になるのだとか。
やたら祭りが多いのはそのせいなのかな。
まぁ、四季の女神達はもれなく気むずかしいらしいが…。

俺が住む世界とは違い、ここはまさに幻想的な世界だ。

さぁどうぞと勧められ、「これはおごりです」と言われつつ一口、口に含むとそこには柔らかな春の風を思わせる甘やかな喉越しと香り。

やっぱ、このお店…いいよな!と心で何度もうんうんとうなずきながら思った。
…次は絶対彼女を連れてこよう。

「私も同感です。ぜひ次は、ね?」
真横から、マスターが満面の笑顔でこちらを覗き込んだ。

えっ?

「私は心の声を聞くことが出来るのですよ、知りませんでしたか?」
…ま、ますたー?(^^;;

ああ、春だねorz

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