ブログの絵・ロゴ・撮影写真はワタシのオリジナルです。無断流用・転載はしないでネ(^^;;

menu.36「夏の日」

梅雨の雨はやたらとしつこく、さすがに傘を持たずに家を出たのはまずかったなと後悔した。
仕方が無いので、いつも立ち寄る喫茶店に雨宿りを兼ねて駆け込むことにした。
ここはこぢんまりとした店ではあるが、幻覚や夢を見るような気持ちにさせるメニューが揃っている,不思議な場所だった。

年齢不詳だが柔和な笑顔を称えたマスターが近づき、梅雨時はどうも…と苦笑いしながら話した後、期間限定の和菓子を勧めてくれた。
「じゃ、それお願いします」

いつの間にか、外から聞こえてきた雨音が遠のいていた。
ぴちゃ、ぽちゃ、と言うなごりの雨粒の音が微かにする。

しばらくして、冷たい抹茶(の様な香りの飲み物)を添えて出されたのは、葛まんじゅうに似た物だった。
透き通る中に何かが見える。
目を懲らすと、そこにはまぶしい太陽の下で咲き誇るヒマワリや、今はもう珍しくなってしまったホタルが往き来する夜の様が、みえた
…気がした。

「えっ?」

そう呟いた途端、どこからか真夏を告げるかの如き、セミの盛大な合唱が聞こえてきた。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です