描:海の底、たゆたう薔薇ありて
2013年8月24日
それは、誰が投じた物かは判らない。
判らないが…それは尊く気高い想いが結晶となり、薔薇の花を象ったと言う。
かつて海を往き、不幸にも沈んでしまったその船の底。
愛しい人を待ち続け、そのまま消え去ってしまった貴婦人が傾けるグラスには、その想いの欠片を沈めた酒が注がれている。
飲み干すのは誰か。
深い海の底にあると言う伝説の場に伝わるおとぎ話が、単なる不思議なおとぎ話でしかなかったのは…ある人物が沈没船の中のとある部屋、テーブルに置かれたままだったグラス…中にクリスタルの光を放つ透明な薔薇と,注がれた不思議な色合いの酒を見るまでの話だ。
海水に侵されること無く、そのグラスには酒と薔薇が…。
今は居ない貴婦人とその想い人の話を伝える,妖しく優しげな色を称えた「それ」は、人知れず…とある場所に安置されている。